西洋古典学への誘い

藤井崇:西洋古典学の研究支援サイト(第1回)

 インターネットの発達で、わたしたちの知の営みは大きく様変わりしてきました。特に、日本から遠く離れた世界で生まれ継承されてきた西洋古典学を学ぶわたしたたちにとって、インターネットで得られる情報は、その速度と平等性によって、彼我の距離を大きく縮める役割を果たしてきたといってよいでしょう。もちろん、古典研究の盛んな国々に留学や在外研究にいったり、国際学会で報告をしたり、博物館を訪ね遺跡を調査するといった活動も、その重要性が薄れてきたというわけではありません。むしろ、このような「直接的な」な活動を支える情報も、インターネットから効率よく集めることができるようになったというべきでしょう。このコーナーでは、研究者間の交流、書評、留学・研究費、研究資料などわたしたちの研究活動を助けてくれるサイトを中心にして、わたしがこれまで集めてきた情報からめぼしいものを数回にわたって紹介していきたいと思います。個人的には、このコーナーが、今度はわたしたちの側から国際研究フォーラムに何か貢献できることはないかを考える、そのきっかけになればと思っています。第1回目の今回は、メーリングリスト、研究紹介・研究者間の交流サイト、書評サイトを紹介したいと思います。

*今後の投稿全般に関していえることですが、紹介できるサイトはわたしの関心(ヘレニズム期からローマ期にかけてのギリシア語圏の歴史)を中心に集めてきたものに過ぎませんので、みなさんからの補足情報がござましたら、遠慮なくご連絡ださい。このコーナーで随時紹介させていただきたいと思います。みなさんと協力して、有益な研究支援サイトの一覧をつくっていきたいと思います。(補足情報のご連絡はHP運営委員会 mitto★clsoc.jp 宛にお願いします:★は「@」に変更)

メーリングリスト

Liverpool Classics Mailing List: http://listserv.liv.ac.uk/archives/classicists.html
世界の学会・講演会開催情報、留学奨学金・在外研究支援の情報、研究プロジェクト情報、新刊書・展覧会情報など活発な情報交換がおこなわれている。研究に関する質問や議論(例えば英語による出版の意義に関する議論など)も盛ん。

研究紹介・研究者間の交流

Researchmap: http://researchmap.jp/
主に日本在住研究者の履歴・研究紹介。ブログを書いたり、論文をアップする人もいる。大学院生でも自分のページを持つことができるので、研究の紹介に便利。

Academia.edu: http://www.academia.edu/
世界の研究者の交流サイト。少なくともわたしの専門分野(ギリシア・ローマ史)では、かなりの有名人も登録している。基本的な仕組みはResearchmapと同じだが、論文のPDFデータをアップしている人が多いので、非常に便利。

書評サイト
*以下のサイトのほとんどは書評の投稿をすることも可能のようです。

Bryn Mawr Classical Review: http://bmcr.brynmawr.edu/
古典学全般。登録すればメールの形式で書評が送られてくる。あまりにたくさんの書評が送られてきて、読むべき本の多さに意気阻喪するという弊害もあるが、手っ取り早く新刊書の情報を知るには便利。

Sehepunkte: http://www.sehepunkte.de/
歴史学全般の書評サイトだが、古代史に強い。これも登録すればメールで送られてくる。

Digressus: http://www.digressus.org/index.html
ノッティンガム大学とバーミンガム大学の院生協会がつくる古典学全般のオンライン・ジャーナル。書評の割合が多い。院生による投稿を推奨している。

Gnomon Bibliographische Datenbank: http://www.gnomon-online.de/
研究文献と書評の所出を検索できる。

The Marginalia Review of Books: http://themarginaliareview.com/
歴史学、宗教学を中心としたウェブ書評サイト。有名人のインタビュー(ピーター・ブラウンなど)を聞けるのがおもしろい。

Plekos: http://www.plekos.uni-muenchen.de/startseite.html
ローマ期・古代末期に特化した書評サイト。

Scholia Review: http://www.classics.ukzn.ac.za/reviews/
南アフリカのKwaZulu-Natal大学が出していた古典学全般の書評サイトだが、2011年が最終号となっている。

藤井崇