西洋古典学への誘い

西洋古典学を学ぶきっかけ

西洋古典学との出会い

 小学校2年生の時、本屋で偶然に出会い、母が買い与えてくれた星座神話の本たち――それが私を西洋古典学の道へと誘ったものです。夜空に浮かぶ星座とその神話が季節ごとに紹介されているそのシリーズを、私は夢中になって読んでいました。特に心惹かれたのが、ペルセポネの略奪やアモルとプシュケの恋物語といったギリシア・ローマ神話でした。しかし、その当時はそれらを「大好きなファンタジーもののひとつ」としか認識していませんでした。

 高校入学当時、私はぼんやりと「欧米の言語や文学、歴史について勉強したいなぁ」と考えていました。英語は好きでしたし、幼い時によく読んだ童話や児童文学はやはり好きだったからです。世界史の授業でヨーロッパの歴史を学んでいるのも大好きな時間でした。さて何を学ぼうかと考えたとき、ふと思い出されたのが先述の本たちです。そのとき「私の原点になっているのはこれだ。本を読むことを好きになった原点、ヨーロッパに憧れるようになった始まりだ」と確信しました。そして、ギリシア神話を本格的に学びたいと思い、西洋古典学の扉を叩きました。

 そして学問の対象としてのギリシア神話に初めて触れたのは大学1年生の時、西洋古典学の研究室で本格的に学び始めたのは大学2年生になってからです。そのときから、今もなお、私は新たな古典学の側面を知り、驚かされる毎日です。小学生の自分が主に読んでいた神話群はオウィディウスの『変身物語』や『祭暦』の中で描かれていた物語であること。悲劇や喜劇といった、神話をもとにしたさまざまな作品が生み出されたこと。何のために戦争をするのか、正義とは何か、愛するとはどういうことか――そのような問いかけが、作品を通して投げかけられているのだということ。時代を超えてなお読み継がれるだけの深みがギリシア・ローマ文学には存在するのだということ。

 現在私は、まさに原点に立ち返り、オウィディウスの作品を中心に研究を進めています。まだまだ未熟な私ではありますが、古典の世界に出会えた幸せを噛み締め、その素晴らしさを伝える役目の担い手になるという夢を抱えながら、今日も古代ギリシア・ローマのことを少しずつ学んでいます。

服部桃子(名古屋大学文学部・西洋古典学専修3年)