西洋古典学への誘い

藤井崇:西洋古典学の研究支援サイト(第3回)

 前回の投稿からずいぶん時間がたってしまいました。申し訳ございません。今後も細々とではありますが、有益なサイトの紹介を続けて参りたいと思います。

 前回、前々回の投稿では、メーリングリスト、書評サイト、奨学金関係サイトなど古典学全体の社会的側面を支えるサイトを紹介しましたが、今回からは、実際の勉強、研究に関係するサイトを紹介していきたいと思います。今日は、銘文学、特にギリシア語銘文学に関するサイトから主なものをとりあげます。

銘文学全般に関するポータルサイト
Saxa Loquuntur: http://www.saxa-loquuntur.nl/
ギリシア語・ラテン語銘文に関する基本的な情報や有益なサイト(オンライン版コーパスや年報など)を整理している便利なポータル。オランダの古代史家 Onno van Nijf 教授が主宰している。今回のリストに挙げることのできなかったオンライン版コーパスも数多く紹介されているので、一見の価値あり。

Eagle Project: http://www.eagle-network.eu/
2013年に発足したサイト。欧州委員会の援助を受けており、ヨーロッパに分散していた銘文のデータベースを集約して、一括検索の実現を目指している。2014年4月現在、まだ検索機能は稼働していないが、2014年9月までには使用可能になるであろうとのこと。

ギリシア語銘文に関するサイト
SEG: http://referenceworks.brillonline.com/browse/supplementum-epigraphicum-graecum
ギリシア語銘文に関する新発見や新研究を掲載する年報。検索機能や銘文間の相互リンクが充実しており、非常に有用。オンライン版は個人で買うには高価だが、大学図書館が購入している場合があるので、要確認。

PHI: http://epigraphy.packhum.org/inscriptions/main
ギリシア語銘文に関しては、最大の規模を誇るオンライン・コーパス。ギリシア語単語・フレーズによる検索、地域による検索、収録されているコーパス(例えば IG など)による検索が可能。

IG: http://telota.bbaw.de/ig/index.html
Inscriptiones Graecae (ギリシア本土と島嶼部の銘文集成) の一部が、ドイツ語翻訳とともに挙げられている。

Attic Inscriptions Online: http://www.atticinscriptions.com/
2012年末に開設されたサイト。アッティカ出土の全銘文の英語翻訳を掲載することを目的とする。収録数はまだまだ少ないが、英語訳が確認できるのは貴重。

IGR vols. 1, 2 and 3:
https://archive.org/details/inscriptionesgra01cagnuoft
https://archive.org/details/inscriptionesgra03cagnuoft
https://archive.org/details/inscriptionesgra04cagnuoft
ギリシア世界とローマ世界との関わりについての銘文の集成。

Epigraphic Bulletin for Greek Religion, Kernos: http://kernos.revues.org/
雑誌 Kernos に毎年掲載される、ギリシア宗教に関わる銘文の年報。編者は上記 SEG の編者でもある Angelos Chaniotis 教授である。

Aphrodisias Inscriptions: http://insaph.kcl.ac.uk/index.html
小アジアのアフロディシアス出土の銘文を集成。ギリシア語原文のみならず、翻訳、コメンタリー、銘文が刻まれたモニュメントの写真もあわせた理想的なオンライン版コーパスのひとつ。

MAMA XI: http://mama.csad.ox.ac.uk/index.html
小アジアのフリュギア、リュカオニアの銘文を掲載。これも、上記のアフロディシアスのものと同じく、原文、翻訳、コメンタリー、写真を付した充実の内容。

藤井崇