コラム
勝又泰洋:イギリス小滞在記(1):イギリス到着、オックスフォードの宿泊先へ
皆さまはじめまして。京都大学大学院博士後期課程の勝又泰洋(かつまたやすひろ)です。真に光栄なことに、本コラムページに今後数回にわたって拙文を掲載させていただくことになりました。テーマは、「イギリス小滞在記」です。私は、今年2012年の4月1日から6月30日までの3ヶ月間、オックスフォード大学古典学部にて、Academic Visitorの身分で研究活動に勤しんで参りました。本コラムでは、そんな私のイギリスでのさまざまな体験を多くの感想を交えつつご紹介していきたいと思います。お読みになる皆さまが愉快な気分になるようなものを毎回提供していきたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
4月1日、日本はすでに心地よい春を迎えていたが、日本より緯度の高いイギリスの寒さ対策として冬用の厚いコートを羽織った私は、12時間にわたる空の移動を終え、ロンドンはヒースロー空港に降り立った。初めての飛行機に体はへとへと、初めての異国の地に戸惑うばかり。思考能力歩行能力は限りなくゼロに近い状態であったが、まずはとにかくここからオックスフォードへ移動せねばならない。時刻は午後の4時前。バスでの移動(空港とオックスフォードを直通でつなぐバスがある)を考えていたが、ちょっとした「ちょろまかし」の犠牲者となり、結局高額タクシーで宿泊先のB&Bに到着した。小さいけれども、堂々としたヴィクトリア様式の建物である。
空港で超過料金を払わねばならぬほど重たく大きい私のスーツケースを部屋まで運んでくれたB&Bの管理人の奥様(すでに退職を迎えた初老夫婦がそこを管理されていた)は、運び終えるや、「お前はトラベラーではない」と言ってきた。「ええ、私はスカラーですからね」と返してもよかったが、イギリスの笑いの勘所をおさえぬままジョークを飛ばすことは危険だと思い、そこは「初めてなもので」で済ませておいた。
部屋は思っていたより広く、ベッドは寝心地抜群、テレビは見たい放題。中でも一番感激したのは、勉強机の大きさである。木目のデコボコと脚のガタガタが少し気にはなったが、古いものを大切にするイギリス人の美しい心性が反映された一品であった。私は今でもあの机を愛している。
イギリスは驚くほど日が長く(夜の7時8時くらいまでは、日本の昼、といった感じである)、外はまだ明るかったため、少し散歩に出てもよいと思った。何よりも、写真でしか見たことのないあのオックスフォード大学が気になって仕方がない。しかしこれが時差ボケというのか、かなりの眠気に襲われていた。結局その日はシャワーを浴びて早めに就寝することにした。大学はどのようなところなのだろう……。どのような人がいるのだろう……。明日行ってみよう。本当に楽しみだ。
勝又泰洋(京都大学大学院)