コラム

河島思朗:オリンピックの起源

 もうすぐロンドンオリンピックが開催されます。その開会式で、一番最初に入場する国をご存知ですか?それはギリシアです。オリンピック発祥の地であるギリシアに敬意を払い、ギリシアを先頭に入場行進が行われるのです。

 1896年に始まり、今年で30回目を迎える近代オリンピックは、毎回異なる都市で催されます。古代のオリンピックは、ギリシアのオリュンピアという地で、現在と同様に4年に1度開催されていました。最初の大会は紀元前776年だったと伝承されています。これがオリンピックの起源です。しかし古代のオリンピックは、競技祭として、つまり神に捧げる競技の祭りとして行われました。オリュンピアで開催される競技祭は「オリュンピア大祭」という名前のゼウスに捧げられる祭りだったのです。

 古代ギリシアにはオリュンピア大祭以外にも同様の競技祭がありました。デルポイではアポロンに捧げるピューティア大祭が4年に1度開催されました。ネメアではネメア大祭が2年に1度ゼウスに捧げられ、イストミア(コリント)では2年に1度ポセイドンに捧げられるイストミア大祭が開催されています。これらの4つの競技祭を四大競技大祭と呼んでいます。古代のギリシア人が肉体を鍛え上げて互いの力を競い合うことに積極的だったことを窺い知ることができます。

 ところで、古代には「ギリシア」という国家は存在しません。ポリス(都市国家)と呼ばれる独立した小国家が無数に点在していました。オリュンピア大祭には、緒国家のスポーツ選手が一同に集まってきて競技を行うのです。現在のオリンピックと同様に、国際的なイベントだったわけです。また、競技祭は移動や準備を含めて、およそ3カ月間にわたるものでした。この祭りの期間には、「休戦協定」が結ばれることになっていました。

 古代のオリンピックは国際的な平和の祭典だったのです。

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『ディスコボロス(円盤投げ)』ローマ国立博物館
Wikimedia Commons

読書案内:村川堅太郎『オリンピア』中公新書、1963
  桜井万里子・橋場弦編『古代オリンピック』岩波新書、2004

河島思朗(東京外国語大学ほか 非常勤講師)