Q&Aコーナー
質問
アテネのギリシャ語はアテナイだと思うのですが、なぜ複数形なのでしょうか?
このような例は他にもありますか?
(質問者:Perky 様)
回答
アテネの古代ギリシア語での表記はAthenai(アテーナイ)で、確かに女神Athene(アテーネー。Athana アターナーのイオニア方言形)の複数形です。町の名前が複数形で表される理由については、近隣の地域が集まって一つの都市を形成するから、あるいは、女神がたくさんいらっしゃるから、という説明をかつて読んだように思いますが、今その書物を思い出せませんし、どちらの説も怪しげで、今その当否を確言できませんので、関連する雑談をいたします。
女神アテーネーから都市の名前ができたのか、都市の名前から女神の呼び名が作られたのか、かつては議論となっていましたが、この問題は女神から都市の名前ができた、ということで決着しているようです。いずれにしてもアテーネー、アテーナイはギリシア語ではなく、先住民の言語が基礎になっていると考えられています。そしてアテーナイという地名は、ギリシアには他にも一つ二つありました。
神話では、海神ポセイドーンと知恵の女神アテーネーがアッティカ地方(アテーナイを首都とする地域)の領有を争った時、ポセイドーンは三叉戟で岩を打って塩水を湧き出させ、アテーネーはオリーブを生じさせたところ、神々はオリーブの方が有益だと考えて、アテーネーにその地の命名と守護をゆだねた、と。
女性名詞の複数形で地名となっているものに、有名なものではミュケーナイ(ミュケーネーはニュンフ)、テーバイ(テーベーはプロメーテウスの娘)がありますが、この他思いつくままに挙げると、アミュクライ、テルモピュライ(熱い門の複数形)、アラルコメナイ、テスピアイ、クレオーナイ、パトライ、テラプナイ、沢山ありますが、それぞれ由来が異なるでしょうから、形だけ女性複数形だからといって並べるのはよくないかもしれません。
(回答:T.N.)