Q&Aコーナー

質問

ギリシアのものが好きで、さまざまな作品を日本語に訳している者です。作業中、適当な訳語が見つからないことは多々あるのですが、とりわけ困ってしまうのは、植物名に出会ったときです。こんなときにはどうすればよいのでしょうか。アドバイスをいただければと思います。

(質問者:葡萄酒の飲めないギリシア人様)

回答

ご質問有難うございました。

 翻訳の際、古代の植物をどう表記するかという問題にはだれもが悩まされるのではないでしょうか。日本とは気候が異なる地中海地方の、しかも古代の植物について、それが現在の分類体系の中のどの植物とみなせるのか、同定すること自体大変難しいうえ、同定された和名を探すのがまた一苦労だからです。ここでは、お尋ねが和名表記であるようですので、まず、同定が確定している場合の和名表記からのべます。

 植物の専門の研究者たちが、ある植物(種)の日本語名として認め、図鑑などにも使っている名称を「和名」というのですが、地中海地方の植物の場合、和名が定まっていない場合が多いので、どう記すかについて苦慮することになります。そこで、A. 同定が確立している場合、B.同定が定まっていない場合、また、C.和名表記が混乱している場合について、表記の仕方を考えてみたいと思います。

A.同定が確立している場合→和名を図鑑類で探します。

 作品にでてくる植物にたいして、どの注釈書も一つの学名を提示している場合は、図鑑類で、それに当たる和名を探せばよいわけです。

 日本の図鑑類には地中海地方の植物はあまり載載されていないのですが、『朝日百科 植物の世界』は世界の植物を広くとりあげていますので、和名探しに大変役立ちます。これには植物学者の手になる記事と共に多くの写真があり、学名、和名、事項の索引が整っている点でも有益です。しかし、我が国にあまり縁がない植物は、和名がなく、学名をカタカナ表記しています。これは翻訳に使うには不向きです。

 そのような場合には、他の図鑑、例えば、北隆館『原色世界植物大図鑑』『原色高山植物大図鑑』『原色日本樹木大図鑑』、平凡社の『世界有用植物辞典』、その他、保育社、山と渓谷社などから出た大きな図鑑類にあたってみるとよいでしょう。また、聖書の植物については古くから研究されており、ギリシアの植物と共通するものがありますから、例えば、廣部千恵子『新聖書植物図鑑』などで、他で見つけられなかった植物の和名を探すことができるかもしれません。

 また、わが国では、明治以降、気候的に温帯の欧米の植物は比較的多く導入され、多くの帰化植物に和名がついています。地中海地方の植物は、湿潤な日本では育ちにくいため、多くはありませんが、『日本帰化植物写真図鑑』(全国農村教育協会、2002年)帰化しているものもあり、和名を見つけることができます。例えば、全草に界面活性作用があるので、洗剤として使われ、また医療効果でも知られるSaponaria officinalisには「サボンソウ」という和名が付いています。これは長野県の河川敷や道端に群生しているのに驚いたことがあるほど帰化しています。おそらく園芸用に持ち込まれたものが、エスケープして、群落をつくるまでになったものでしょう。地中海の植物でも、このように有用であるとか、珍しい特性があるものには和名がつけられているようです。

 ネットで見られる『跡見群芳譜』(この名で検索)にも世界の植物が収められており、和名もつけられています。これは『朝日百科 植物の世界』などに依拠していますので、上記の図鑑同様に利用してもよいかと思われます。地中海地方の植物は広く一般に分布しているものでないので、私自身はネット検索を控えています。(これは、検索技術が低いことにもよりますので、個人的には、ということです。)

 図鑑以外では、ネットより、専門家が寄稿した書物、事典類を利用した方がよいかと思います。① 樹木については、日本林業技術協会編『林業百科事典』(丸善、1975)、② 植物一般については、『平凡社大百科事典』(平凡社、1984-85)などの百科事典でも和名を見つけられます。また、③モルデンケ『聖書の植物』(八坂書房、1995年)、④マニカ『エジプトの秘薬』(八坂書房)、⑤大澤彌生『古代エジプトの秘薬』(産学社)などには聖書の世界やエジプト古代の植物が扱われており、これらには現代語の名称、古代エジプトやギリシアの名とともに、和名、学名も記されていますから、欧米の註釈本、訳本での名前と照合することもでき、便利です。⑥トマス『樹木学』(築地書館)のように、専門家による訳書では確かな和名を知ることができます。③④のように、原典が専門的な書物で、翻訳者が和名決定に力を入れたと思われる場合は、信頼できるのではないでしょうか。

 こうして探した和名は通常、図鑑などでも動物名や植物名はカタカナで書くという習慣がありますので、カタカナで書きます。

B.同定された学名にあたる和名が定まっていない場合→原音表記とし、近縁種、あるいは属名を註記する

 欧米の訳書では訳文にはその国の通称を用い、註に学名を記すというものが多いようです。植物相が近いために同じ植物か、近縁の植物が分布しているので、該当する自国語があるからでしょう。しかし、日本ではそうはいきません。学名がわかっても、和名を見つけられないことがあるからです。そのような場合の対処の仕方を、テオプラストス『植物誌』の例をひいて、考えてみたいと思います。『植物誌』は18世紀までこれを超えるものがなかったといわれる植物研究書ですが、特にその優れた記載のおかげで出てくる植物の同定ができる場合が多い書物です。学名が分っているのに、和名がないのはどんな場合でしょうか。

 1.モミの場合。「エラテーἐλάτη」はモミ属の諸種にあたります。ヨーロッパに一般的なのはヨーロッパモミAbies albaですが、ギリシアではこれよりもギリシアの固有種、Abies cephalonicaが一般的に分布しています。これは、英名をgreek firといい、「ギリシアモミ」と訳した書物もありますが、確立した和名ではないようです。ところが、Quercus cerrisと同定されているオークの仲間の「ハリプロイオスἁλίφλοιος」と「エウテュプロイオスεὐθύφλοιος」は、英名のTurkey oak から、「ターキーオーク」という和名が使われており、和名のつけ方に原則があるわけではないようです。

 2.「コマロスκόμαρος」という低木は地中海地方固有のイチゴのような液果がつく低木のArbutus unedoにあたり、英名はstrawberry tree、和名をイチゴノキといいます。その近縁種でギリシア周辺によく分布する木にArbutus andrachneという木で、イチゴノキより実は小さく、木は大きい、よく似た種があります。英名をGreek strawberry treeといいますが、和名がついていません。これが古典ギリシア語の「アンドラクネーἀνδράχνη」にあたります。これを英名から「ギリシア[種の]イチゴノキ」と記せば、一読してイチゴノキの近縁種と分かりますのに、そうはいきません。和名として通用するのは、植物学者の間で認められたものだからです。

 (もっとも、使用頻度が高くなり、事実上通用するようになると、「和名」として図鑑にも載るのだそうです。例えば、新日本製薬では、東ヨーロッパ原産のArtemisia maritimaをヨーロッパからいれ、京都の壬生の圃場で改良を重ねてサントニンという回虫駆除薬として薬効の強い品種を作り出したのですが、壬生でできたので「壬生蓬(ミブヨモギ)」と呼んでいたところ、図鑑にもそう記載されるようになったそうです。)

 3.原語で「κέδρος ἡ φοινική」(フェニキアのケドロスの意)にあたる Juniperus excelsaは英名をGreek juniper(「ギリシアのネズ[ネズミサシ]」の意)といいますが、和名は定まっていません。このように、英名にはGreek ~という名がついているギリシアの固有種で和名がないものがこのほかにいくつもあります。

 4.地方の固有種の場合、学名の種小名が産地を示している場合があります。例えば、ラムノスの白い種 ῥάμνος ἡ λευκήにあたるRhamnus graecus(「ギリシアのクロウメモドキ」の意)などです。学名の和訳が和名として使えれば、訳者は訳しやすく、読者には分かり易くなるのにと残念です。

 このように、学名が分っていても、それに対応する和名がない場合は、学名を和訳して和名としてしまうわけにはいきません。また、学名のカタカナ表記は読者には分り難いと思われます。このような場合には、ギリシア語の名称をカタカナで記すのがよいのではないのでしょうか。その上で、学名と「~の仲間」「~の近縁種」などと註記しておけば、植物好きな人だけでなく、誰にもイメージしやすくなって良いのではないかと思います。 ところで、作品によっては、とくに詩の場合など、出てくる植物が何かは内容の理解に重要な点では科学書と同じだと思いますが、和名がないからと、二名表記で字数の多い学名や、ギリシア語をカタカナで記したのでは、一読してイメージが湧きにくいことでしょう。また、韻律や文章の雰囲気を崩してしまうという恐れもあるでしょう。さらに、「セイヨウニワトコ」や「ヨーロッパナラ」などのようにセイヨウやヨーロッパなどがついているのも煩わしいことでしょう。そういう場合は、簡潔な名称を使ってもよいのではないでしょうか。ギリシア人もモミ属の諸種を「エラテー」と呼んでいたように、今の属名に近い捉え方で植物を呼んでいたことが知られています。ですから、テオプラストスの『植物誌』のように、植物学的な正確さを必要とする作品以外では、「樅」などの漢字で訳したほうが美しい訳文になる場合はそうしてもよいのではないでしょうか。(その場合でも、古代の植物の情報を伝える役割もあるのですから、学名や和名を何らかの形で記しておくのも大事なことではないでしょうか。)

C.和名表記が混乱している場合

 多くの古典に出てくる「ドリュースδρῦς」はQuercusコナラ属にあたります。テオプラストスはこれを現在のQuercusコナラ属の樹木の総称として使っています。ところが、従来、多くの作品で「樫」「槲」などの訳語があてられてきました。 しかし、ギリシアのコナラ属には「樫」、すなわち「カシ類」は分布しません。日本では、コナラ属をナラ類とカシ類に分類しますが、カシ類とは「常緑樹で、葉が革質、その堅果を包む殻斗の総苞の鱗片が癒合して、数層の輪状(同心円状の模様)になるものをいい、主として東アジアから東南アジアの暖帯に分布する」ものです(『林業大百科事典』による)。つまり、ギリシアを含むヨーロッパには「カシ類」は分布しません。英独仏語でいうoak,Eiche,chêne は日本でいう「樫」には当たらないのです。

 ギリシアには、ヨーロッパナラQ.roburとその近縁種Q.petraeaなどの落葉コナラ属と、常緑、半常緑のコナラ属(アカミガシQ.coccinea 他)が分布しています。とすると、テオプラストスがギリシアのコナラ属の総称として使っている「ドリュース」の和名に「樫」を使ってしまうのはよくないのではないかと思われます。解決策として、ヨーロッパのコナラ属を総称して英語で「オーク」と呼ぶことから、最近ではギリシアのコナラ属の総称として「オーク」を使う人が増えてきています。植物学的には、その方がよいのではないでしょうか。漢字の名称が一般化している場合でも注意が必要な場合があることを心に留めておきたいと思います。

 ちなみに、コナラ属の中には和名にも「カシ」とついたものがあり、これはもう慣用されていますから、訳語として使うことになります。

 「プリーノスπρῖνος」にあたるQ.coccinea はヒイラギに似た常緑の硬葉ですが、堅果の殻斗の鱗片は刺状で、カシ類の殻斗とは異なります。赤い染料として使われた赤い虫こぶができますので、「赤い実(コッコスκόκκος)の」という種小名が付いています。その為か、和名もアカミガシ(赤実樫)というのですが、「カシ類」ではありません。また、ドドナでは巫女が「樫の葉のそよぎ」を聞いて神託を下したといわれますが、その木は作品によって「ドリュース」とか「ペーゴスφηγός」と記され、Q.aegilops、「バロニアガシ」にあたるとされます。この木の硬い葉は新しい葉がでるまで葉が落ちないので、ほとんど常緑ですが、殻斗には長い鱗片がびっしりついていて、カシ類とは異なります。

 ちなみに、ギリシア人も、ホメロスの昔から、落葉オークの実(堅果)を「バラノスβάλανος」(どんぐり)、常緑オークの実を「アキュロスἄκυλος」と区別して、両者の違いをみとめていました。しかし、日本でいう「カシ類」ではありません。ところが、和名は「ドリュース」=「樫の木」の名残をとどめているというわけです。これはそのまま使うしかありませんし、読んですぐわかる名称という点では優れているといえます。 このように、古代の植物について和名を探すのはなかなか面倒なことです。さまざまな問題がありますが、最後に、どんな植物であるかを分り易く、しかも正確に伝えるにはどのような表記をこころがければよいか、簡単にまとめてみます。

まとめ

 最初に述べたように、和名がすぐ決められるのは、すべての註釈者の同定が一致している場合だけです。それ以外は、文献や図鑑、事典類に見られる写真や記載(特徴、生育環境、分布域、用途など)にあたりながら、提案された植物のどれにあたるかを検討する作業をしなくてはなりません。それがすんだら、該当する和名を探すことになります。 表記方法は、

① 同定できた植物については、図鑑や事典類からその学名にあたる和名を探す。和名がわかった場合は、特別な場合以外は、植物学の慣用にしたがって和名をカタカナで表記する。

② 同定された学名の和名が見つからない場合は、原音表記する(括弧にくくるなどして、原音であることを示す)。その上で、和名がついている近縁種をあげ、それに近い種であることを註記して、その植物がすぐ思い浮かぶような表記を心がける。

③ 詩など文学作品で植物の片仮名表記になじまない場合や、和名の字数のために、調子が乱れる場合などは、その植物が属すグループ名(多くは属名)などを漢字や仮名で記し、それが和名ではないことを註記しておく。

④ 和名が混乱している場合は、一般的に使われてきた名称にも、望ましくないものがあることに注意し、提示されてきた名称を再検討する。

 いずれの場合にも、学名や和名がわかっている場合には、ほかの作品にでてくる植物とも照合できるように、註に学名(あれば和名)を記すなどして、翻訳を通して、古代ギリシアの植物について、ひいては古代ギリシアの自然について、正確な情報が伝わるように心がけたいものだと思います。

 最後に同定について、少しだけ付け加えておきます。植物は気候によって生育領域が変わりますが、古代史家の間では、特に紀元前5、4世紀頃のギリシアの気候は、現在の気候と同一であったという見方で一致しています(Sallares, Ecology of the Ancient Greek World, Ithaca/New York 1991,390-396,esp.391.)。したがって、現代のギリシア周辺の植物の中から古典に出てくる植物を探してよいことになります。

 植物の名称を探すのに、一番手っ取り早いのはオックスフォードのギリシア語大辞典LSJを引いてみることでしょう。ところが、困ったことに、その同定は厳しい批判を浴びています(Raven, J.E., Plant and Plant Lore in Ancient Greece, Oxford, 2000,pp.5-9, Amigues, S., Théophraste,Recherches sur les plantes, Tome I,Paris,1988,p.L)。LSJに採用されている同定はキューガーデンの園長だったシスルトン・ダイアーによるものですが、参照した古典文献数が少なく、同定の証拠資料が不十分だから信用できないものがあるというのです。誰もが手にするこの辞書に基づいて和名を探しても、正確ではない場合があるというのは厄介なことです。

 したがって、まずはLSJを引いてみて、校訂本などの註釈に見られる同定と一致しない場合には、再検討しなければなりません。いくつかの注釈書で同定された学名の中から、適切なものを探すことになるのですが、そういう場合には、同名の植物が出現する諸作品の註釈書を参照することが必要になります。(植物について記述の多い、テオプラストス『植物誌』やディオスコリデス『薬物誌』、プリニウス『博物誌』、アテナイオス『賢人たちの食卓』をはじめとして、さまざまな作品に出てくる植物について、どの植物と同定されているか、邦訳ではどう訳されているかを確かめてみるのも有益でしょう。出現箇所はLSJ、必要ならTLGの用語検索で検索できます。いくつも註釈書がある場合、最も評価が高いとされる注釈書を見逃さないように気を付けたいものです。

 ちなみに、欧米の註釈書では、Loeb版の註は学名だけのことが多いのですが、植物に関してはテオプラストスやプリニウスのBudé版(Collection des universités de France=CUF)には、過去の同定にさかのぼって詳細に検討した註がつけられていますので、参考になるかと思います。とくに、テオプラストス『植物誌』の新しい校訂者アミグの植物同定は、長年のフィールドワークに基づき、多くの作品についての研究を渉猟してなされた労作で、新しい校訂とともに、高く評価されています(Amigues,S.,Théophraste, Recherches sur les plantes,Tome I-V, Paris, 1988-2006. 拙訳、テオプラストス『植物誌 I』、京大出版会、2008年はこの成果を取り入れています。アミグは1916年のHort によるLoeb 版をしばしば酷評しています。)。アミグの植物に関する註釈は厳密かつ詳細です。特に、第六巻のシルピオンの同定に関する註の記述は卓抜といわれており、ここを読んでみると、過去の植物同定を検討する方法が学べるかもしれません(Amigues, op.cit., III, pp.139-165)。アミグの同定もいくつかは批判されており、完璧ではありませんが、古代ギリシアの植物の同定を大きく前進させたと言えそうです。『植物誌』には500余種が出てきますから、他の作品に出てくる多くの植物がこの本の中に見つけられるのではないでしょうか。

 フィールドワークが困難な私達は、欧米の研究者による同定を参照しながら、検討していくしかありません。そのような作業をする際、有用と思われる欧米の図鑑類のいくつかを以下に挙げておきます。イギリスの図鑑(特に、王立園芸協会から出ている何種類ものシリーズ)には優れたものが多いのですが(①)、地中海地方の種の記載が少ない場合がありますので、ギリシアの図鑑が役に立ちます(②)。また特徴の記載が厳密で詳述な植物誌(Flora of ~)は、テクストの記述との照合に役立ちます(③)。採録された種数が多く、索引が便利なものもあります(④)。


 Bown, Deni, The Encyclopedia of Herbs - &their uses, London, 1995.
 Chevallier, Andrew, The Encyclopedia of Medicinal Plants, London, 1996.
 Brickell, Christopher ,ed., ,Gardeners’ Encyclopedia of Plants & Flowers, (The Royal  Horticultural Society=RHS), London, (1ed.1989), 1991.


 Strid, Arne, Wild flowers of Mount Olympus, Athens 1980.
   グーランドリス博物館から出版されたオリンポス山の植物の図鑑、
 George Sfikas, Self-propagating Trees and shrubs of Greece, Athens / Thessaloniki, (1978), repr. 1990. [Sfikas.Trees]
 Ibid., Medicinal Plants of Greece, Athens / Thessaoniki, (1979),1985.
 Ibid., Wild flowers of Crete, ,Athens,1995.
 Ibid., Wild flowers of Cyprus, Athens,1994.
   スフィカスの図鑑は小さいですが、ギリシア固有種の記載、写真を見ることができるので、重宝です。
 Bayer, E.,K.P.Buttler,X.Finkenzeller & J.Grau, Guide de la flore méditerranéenne ― Caractéristiques, habitat, distribution, et particularites de 536 espèces, Paris 1990.
   フランスの図鑑ですので、地中海地方の固有種が記載されています。

③ 
 Meikle, R.D.,Flora of Cyprus,vol.1, London etc.1977,vol.2 1985.
   キューガーデンの研究者による、 キュプロス島の植物について、厳密で詳細な記載が見られます。
 Oleg Polunin,Flowers of Greece and the Balkans,Oxford,1980.
   他では見られないギリシアとバルカン半島の固有種についての記載がみられる。
 Dictionary of Gardening, 2nd ed.,Vol. I-IV, Oxford, 1977.
   A4番4巻の大部な園芸事典で、世界中の植物を網羅的に取り上げたもの。


 Brickell, Christopher ,ed., Gardeners’Encyclopedia of Plants & Flowers, (The Royal Horticultural Society),London,(1ed.1989),1991.
 Page,S,/Olds,M.ed., Botanica ―The Illustrated A-Z of over 10,000 garden plants and how to cultivate them ( Random House Australia)New York,(1ed. 1997),2ed.,1998.
 種数が多い点で有用です。


 インターネットで植物検察をする際、世界の植物園の多くが学名検索で写真や記載を見ることができるようになっていますので、大変便利です。思いがけない情報や写真を見ることができ、有難いものでもあります。植物園の記事は植物学の専門家が手掛けたものですから、「紙の図鑑」同様、信頼できると思います。学名で検索すると、公的サイト、例えば、アメリカ合衆国の(USDA Plants database)なども利用なさるとよいでしょう。

 植物名同定の問題を具体的に述べると長くなりますから、ここでは同定された植物の和名をどう表記するかを中心に述べてみました。お役に立てましたら、幸いです。

(回答者:小川洋子 2014.2.5)