Q&Aコーナー

質問

ホメーロスを読んでいるアマチュアの者です。

アリスタルコス等の古代ホメーロス学者の註釈に興味を持っています。ついては
Scholia Graeca in Homeri Iliadem
も読んでみたいと思いつつなかなか歯が立ちません。この書の近代語訳があればありがたいのですが、それは存在するのでしょうか。

ご教示願えれば幸いです。

(homeridai 様)

回答

 ご質問、有難うございました。

 ホメロスへのスコリア(古註)の近代語訳はないと思いますが、それを読むための手助けとなるものは幾つかありそうです。まず、

Eleanor Dickey, Ancient Greek Scholarship. Oxford UP, 2007. Pp.345

 これはA Guide to Finding, Reading, and Understanding Scholia, Commentaries, Lexica, and Grammatical Treatises, from Their Beginnings to the Byzantine Period という副題が示すとおり、古代人の手になる注釈や辞書、文法書などを解説すると共に、それらを読みこなすためのノウハウを伝授する手引書です。英訳のサンプルが豊富な上、1500語にのぼるテクニカルタームの訳語が極めて有益です。

René Nünlist, The Ancient Critic at Work. Terms and Concept of Literary Criticism in Greek Scholia. Cambridge UP, 2009. Pp. 447

 こちらは私は持っていないのですが、文学スコリアを使いこなすためのこよなき導きの書だとGreece & Romeの書評にありました。

 ホメロスの英独仏語による注釈書は沢山ありますが、その中、

Walter Leaf, The Iliad. I, II. Amsterdam 1971 (London 1900-1902)

(Leaf-BayfieldのMacmillan版、1962ではなく、その元になったものです)はスコリアからの引用を多数含み、英語の注釈と併せ読むと、何が問題となっているかがよく理解できます。

 ホメロスのスコリアをDindorfあるいはErbseの版本で読んでゆくのは大変ですが、重要な箇所を抜粋した92頁の教科書版があります。

Wilhelm Deecke, Auswahl aus den Iliascholien. Zur Einführung in die antike Homerphilologie. Bonn, A. Marcus und E. Weber’s Verlag 1912

 この本を私は松平先生の御授業に出る時(1974年)に買ったのですが、後年、自分がこれを教材に選ぼうとした時(2003年)、ドイツの取次店に問い合わせたら、在庫ありとて数冊送ってくれました。日本の書店との違いに驚いたことです。これは余談。

(回答 T.N.)