Q&Aコーナー
質問
古代ギリシア人はどのようにして神を祀ったのでしょうか。ユダヤ人に見られるような燔祭の習慣はあったのでしょうか。(木下康光 様)
回答
ご質問有難うございました。
古代ギリシア人の神々の祀り方は一言で述べられませんので、とりあえず後半についてお答えします。
燔祭、全焼のいけにえ、英語 holocaust の語源となったギリシア語は、文字通り「丸ごと焼くこと」ですが、古典期のギリシア文献では、クセノポン『アナバシス』7.8.4に、「自分は国許でいつもあなた方のためにこの神に犠牲式を行い、丸焼きの生贄を供えていた」とある他は、見あたらないようです。ギリシアでは動物犠牲(羊、山羊、豚、牛、鳥、魚)は非常に盛んで、その機会もさまざまでしたが、神に全部を捧げるのではなく、殺して、焼いて、共食する、内臓占いをする、のが中心であったようです。正式な犠牲式はヘカトンベー(百頭の牛の意味)と言いましたが、必ずしも百でなく、牛でなくてもこう呼びました。
『アナバシス』には、戦うべきかどうか占うための生贄がしょっちゅう出て来ますが、最も詳しい描写は、ホメロス『オデュッセイア』3.430以下です。ヘシオドス『神統記』535行以下、プロメテウスとゼウスが犠牲の牛の分け方で一もめした話は、神には骨を焼いた煙と匂いを捧げ、人間が内臓と肉を食べる、この慣習の縁起を記したものとされます。
(回答 T.N.)