コラム

河島思朗:カピトーリーヌスの丘(カンピドッリオの丘)

 ローマに旅行したとき、私が最初に訪れたいのは、カピトーリーヌスの丘(現カンピドッリオの丘)だ。ローマの「七つの丘」の一つであるこの丘には、ヴェネチア広場のすぐわきから登ることができる。丘に登ると正面にローマ市庁舎があり、市庁舎の裏手から、古代ローマの中心地、フォルム・ローマーヌムを一望することができる。カピトーリーヌスの丘は現代ローマの中心でもあり、古代ローマへの入り口でもあるのだ。

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古代ローマの中心地、フォルム・ローマーヌム
(C) Stefan Bauer / Wikimedia Commons

 カピトーリーヌスの丘には二つの頂がある。南西の頂には紀元前6世紀ころ古代ローマの主神を祭るユーピテル神殿が、北の頂には前343年、ユーピテルの妻のためにユーノー・モネータ神殿が建設された。二つの丘のあいだには、アシュールムと呼ばれる聖域があったが、前78年この場所には公文書館が建てられた。古代ローマにおいて、この丘はもっとも神聖な場所だった。

 現在、丘の上にはカンピドッリオ広場がある。この広場を設計したのは、ミケランジェロだ。幾何学模様の床が特徴的で、中心にはマルクス・アウレーリウスの騎馬像がある。この騎馬像は175年ころに造られたブロンズ像で、台座はミケランジェロが制作した。ブロンズの劣化を防ぐため、現在はレプリカが置かれており、本物は美術館に所蔵されている。

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Étienne Dupéracの版画(1568)正面が市庁舎(Wikimedia Commons)

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市庁舎側から撮った写真(Wikimedia Commons)

 古代に公文書館のあった場所、広場の正面には、中世末期に元老院宮殿(セナトーリオ)が建設された。現在の市庁舎はこの建物を利用しているために、いまでも「セナトーリオ」と呼ばれる。広場の左右には向きあうように、右側にコンセルヴァトーリ宮殿、左側にヌオーヴォ宮殿が建つ。現在はそれぞれコンセルヴァトーリ美術館、カピトリーノ美術館(二つ合わせてカピトリーニ美術館と呼ばれる)として利用されている。本物のアウレーリウスの騎馬像を所蔵するのは、このコンセルヴァトーリ美術館だ。この美術館は、市民に一般公開された最古の美術館としても有名である。

 カピトーリーヌスの丘に立つとき、古代・中世・現代と続いてきた永遠の都ローマを感じることができる。

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ローマ市庁舎(セナトーリオ)とアウレリアーヌスの騎馬像
(C) Radomil / Wikimedia Commons

河島思朗(東京外国語大、いわき明星大、青山学院女子短期大)